第325章 彼女に告げざるを得ない

浅野武樹は頷いた。「間違いなければ、机の引き出しの中にあるはずだ」

小山千恵子はその革製のノートを取り出し、浅野武樹が手を伸ばして受け取った。

彼は慣れた様子でページをめくり、あっという間に祖父が小山雫が亡くなった日の記録を見つけ出した。

彼の両目には抑えきれない後悔の色が浮かび、眉をひそめながら、つぶやくように読み上げた。

「潔白を証明するために自ら命を絶つなんて、敵の思う壺ではないか?」

小山千恵子の心が締め付けられた。

確かに、祖父の日記にはそう書かれていた。

そこで彼女は気づいた。浅野武樹はまだ、彼女の母の死の真相を知らないのかもしれない。

小山千恵子は浅野武樹の問いかけるような眼差しを見て、一瞬胸が痛んだ。

彼はつい先ほど天災と人災の洗礼を受け、かつて持っていたすべてを失ったばかりだ。