第392話 彼に会うつもり?

記者がまだ追及する間もなく、寺田通が車を運転してやってきた。

彼は遠くから玄関の騒ぎを見て、良くない事態だと察し、ヘッドライトを点けてエンジンを轟かせながら近づいてきた。

群衆は少し散り、藤原晴子は小山千恵子の肩を抱き、彼女を車に乗せ、自身は助手席に飛び乗った。

赤いジープ・ラングラーはクラクションを鳴らしながらゆっくりと路地を出て、高架に上がり、ようやくパパラッチを振り切った。

藤原晴子はほっと息をつき、やっと携帯を取り出して確認し、はっとした。

「なるほど、今や世界中が、あなたと浅野武樹が金曜の朝一番で入籍したことを知っているわ」

小山千恵子は一瞬固まったが、あまり驚かなかった。

浅野武樹は金曜の朝一番で退院する予定で、その後すぐに民政局で入籍する予定を組んでいたはずだ。