第367章 危険なレース

選手たちは準備万端で、カートのエンジンがすでに始動し、会場には規則正しいブンブンという音が響いていた。

騒音と熱波で、小山千恵子の心はさらに焦りを感じていた。

自分の二人の子供たちよりも、彼女の目は思わず大野さんと太った少年の方に向かっていた。

スタート順は前回のテスト成績順で、浅野早志が一番手、小山優子がその後ろだった。

太った少年は5番手で、小さな手でハンドルを強く握り締め、力が入りすぎて肩が思わず震えていた。

子供も緊張していた。

そしてコース脇の大野さんは、太った少年を見つめる目に怒りの炎を宿らせていた。

小山千恵子の心は締め付けられるようだった。

どんなに鈍感でも、太った少年が母親の指示で浅野早志に危害を加えようとしているのは明らかだった。

小山千恵子はもはや冷静さを保てず、手すりに身を乗り出し、焦りながら叫んだ。「優子、早志、気をつけてね!」