このように執着心が強く陰険な浅野武樹のことを、小山千恵子はよく知っていた。
かつての多くの悪夢の中で、浅野武樹はいつもこのように彼女の脳裏に現れていた。
それは彼女が触れたいと思いながらも、逃げ出したい悪夢だった……
浅野武樹は小山千恵子に近づき、その距離は極めて近く、男の温かい吐息が千恵子の額に当たるほどだった。
ウッディな香りが、この瞬間、極めて侵略的に千恵子の全身を包み込んだ。
部屋は静まり返り、空気の温度までもが密かに上昇していた。
浅野武樹はそれ以上近づかず、ただ自嘲的に笑った。
「まるで狂人のようだ。可笑しいだろう」
彼は手を伸ばして千恵子の横にある棚のブックエンドを取り、数歩後ずさりながら、低い声で言った。
「君を憎めば憎むほど、制御不能な独占欲を抑えられなくなる。だから私はいつも君の前に現れ、監視し、病気の時でさえ……」