第419章 出席者は皆狂人

桜井美月は心の中では怖がっていたが、表面上は恐れを見せないようにしていた。

彼女は今日、小山千恵子に手を出すつもりはなく、小山千恵子の性格からして、わざと波風を立てるようなことはしないだろうと確信していた。

しかし今、さっきの視線と笑みに怯え、心が不安になり、もう確信が持てなくなっていた……

桜井美月は顔を上げ、一歩前に出て浅野秀正の腕に手を回し、無理に笑顔を作った。

「皆様、お席にお着きください。オークションが正式に始まる前に、リハビリセンターの子どもたちが皆様のために出し物を用意しています。」

人々はゆっくりとパーティーホールへ向かい、各自の名札がテーブルに置かれていた。

給仕係が整然とゲストを席に案内し、小山千恵子はすぐに自分の席を見つけた。

丸テーブルは前列に配置され、上品で優雅な礼服を着た田島さんがすでに二人の子どもと一緒に着席していた。

小山千恵子は足早に近づき、今夜初めての気楽な笑顔を見せた。

「田島さん、長く待ちましたか?」

浅野武樹が先に彼女のために椅子を引き、自分も落ち着いて席に着くと、手を伸ばしてオークションの冊子を取り、眼鏡をかけてページをめくり始めた。

小山千恵子は熱いお茶を何口か飲んでから、にっこりと微笑んだ。「田島さん、私が言った通り、この礼服はあなたにとても似合っていますね。」

田島さんは顔に軽く化粧を施し、少し照れながら髪に手を添えた。

「ありがとうございます、奥様。あなたのイベントに同行するのに、このような格好をするのは初めてで……」

見渡すと、席にいる使用人やメイドは少なくなかったが、上品に装っているのは田島さんだけだった。

小山千恵子は微笑んだ。「田島さん、遠慮することはありませんよ。私はもともとこの業界の人間ですし、それに……」

彼女は田島さんにも熱いお茶を注ぎ、ごく自然な様子でそれを差し出した。

「……あなたはもう私の家族ですから、私の名前で呼んでくださいね。」

浅野武樹は心が和み、軽く眼鏡を押し上げて、目に浮かぶ感動を隠した。

浅野家という温かみのかけらもない場所で、田島さんは彼が唯一手放したくない人だった。

最も困難な時期に、自分の最愛の人と二人の子どもを、安心して任せられたのは彼女だけだった。

ただ、小山千恵子が田島さんを家族と見なしているとは思いもよらなかった。