桜井美月の緊張した様子を見て、浅野秀正はライターを弄びながら、悠然と様子を眺めていた。
今夜のオークションの金額は、すでに彼のマネーロンダリングの必要額に達していた。余計な問題を避けるため、彼は桜井美月のトラブルに関わりたくなかった。
浅野武樹は高く通った鼻筋に銀縁の眼鏡をかけ、片手を無造作にオークション台に置き、滑らかに語り始めた。
「このピンクダイヤモンドを初めて知ったのは、6年前、私の妻のデザインノートの中でした。」
「彼女はこの原石のカット技術とリング全体のデザインに非常に興味を持っていました。しかし当時、このピンクダイヤモンドの指輪はまだオークション市場に出回っておらず、私は何度も転々と情報を集め、ようやくその所在を突き止めました。」
小山千恵子は静かに聞きながら、心の中は意外にも平静だった。
壇上の男性は表情をあまり変えず、彼女には浅野武樹の心中が読み取れなかった。
「業界ではこのサザンスターは愛を守護し、最高の結婚指輪だと言われています。しかし私が南アメリカで知ったのは、それとは異なる答えでした。」
小山千恵子は眉を上げた。これは確かに彼女が知らなかったことだった。
彼女は知らなかった。浅野武樹がそれを探し、そしてその物語をこれほど詳しく調べていたとは。
「発掘されてから指輪に加工されるまで、この百年間、このサザンスターは5人の所有者を経ています。この5人は例外なく、皆婚姻の破綻と愛の消滅を経験しています。」
会場からどよめきが起こった。
桜井美月の顔色はさらに青ざめた。
このピンクダイヤモンドのセールスポイントは、愛を守護することではなかったのか!
彼女は小山千恵子がこの指輪の行方を探しているのを見て、浅野武樹に何とかして落札させようと、浅野遥を使って浅野武樹に圧力をかけることさえ厭わなかった。
しかし彼女が心から欲しがっていた戦利品、あちこちで自慢していた婚約指輪が、愛の破綻の呪いを帯びているとは…
もしかして浅野武樹はそれを知っていたからこそ、あんなにあっさりと落札して彼女に贈ったのか!
壇上の男性は一瞬言葉を切り、淡々と微笑んだ。