第417章 彼女は悪くなった

浅野武樹はすぐにタバコを一本吸い終え、少し悔しそうに指先をこすった。

確かに禁煙したはずなのに、最近は心が落ち着かず、知らず知らずのうちに昔の習慣を取り戻していた。

冷たい風がすぐに彼の体のタバコの匂いを吹き飛ばし、車に戻ると、小さな子供たちは座っていられなくなった。

小山優子は甘えた声で頼んだ。「パパ、私と弟も車から降りて、ママを待ちたい」

浅野武樹は無奈に笑った。「いいよ、あまり遠くに行かないでね」

彼も知っていた。子供を甘やかしすぎてはいけないと。でも彼は小山優子の要求をどう断ればいいのか、まったくわからなかった。

浅野武樹は片手に一人ずつ、子供たちを車から降ろし、自分は横に立ち、手をポケットに入れ、優しい眼差しで見守っていた。

横で暇を持て余して待っていたインフルエンサーたちは、もう我慢できなかった。

「まあ、スーツ姿で子供を抱く男性、私、ダメだわ……」

「ねえ、かつての生きた閻魔も、今じゃこんなに落ちぶれて。小山千恵子は何を見てるのかしら?彼女がもう要らないなら、私がもらうわよ……」

「まあまあ、浅野武樹のあの体つき、あの顔立ち、見るからに有能そうよね……」

「わかるわかる!それに以前と違って、子供を連れた男性って、なぜか夫感が増すのよね、わかる?それに遊び人が更生したような感じも加わって、本当に忠犬感満点……」

浅野武樹は眉を少し上げ、心の中で自嘲気味に笑った。

花瓶として品定めされるというのは、こういう感じなのか……

電話が鳴り、浅野武樹はちらりと見て、素早く出た。

「千恵子、どこにいるの?」

電話の向こうの小山千恵子は少し焦っていて、息が荒かった。

「レッドカーペットの入口、受付のところよ。待機エリアが混雑していて、運転手の車が回れなかったの」

浅野武樹は優しく声をかけた。「わかった、そこで動かないで、暖かい場所で私たちを待っていて。すぐに行くから」

電話を切ると、浅野武樹は片手ずつ小さな子供たちをつかみ、小さな手を掌の中に握った。

「行くよ、ママが前で待ってるよ」

浅野武樹は浅野グループにいた頃、常に控えめな人柄だった。

彼はもともとこのような場に出席することは稀で、ましてや堂々と人前に出ることなどなかった。

通りがかる人々は皆驚いていた。