黒い子猫は人が入ってくるのを見て、少し怖がり、ニャーと鳴いてバッグの中に隠れた。
浅野武樹も続いて入ってきて、そっとドアを閉めた。
小山千恵子は急いで捕まえようとはせず、足音を軽くして、あたりを見回した。
新品の猫用食器、精巧な自動給水器、一列に並んだ缶詰や凍結乾燥フード、小さな壁棚はそれらでいっぱいだった。
猫はまだとても小さいのに、用意されたキャットタワーは天井近くまで届きそうだった。
「全部あなたが買ったの?」小山千恵子は思わず笑った。
浅野武樹は軽く咳払いをして、珍しく少し困ったような表情を見せ、うんと答えた。
小山千恵子は異なる味のキャットスティックをいくつか取り、床に座った。バッグの中の猫が好奇心から小さな頭を覗かせた。
浅野武樹も座り、優しい表情で黒い子猫を見つめた。