白野社長の件を解決した小山千恵子は、広大な森の別荘の中で居場所がないように感じていた。
愛犬と少し遊んだ後、使用人に尋ねると、浅野武樹は朝早くに出かけたことを知った。
小山千恵子は深く考えず、身支度を整えて出かけた。
帝都では、黒川家の泉の別荘と自分の中腹デザイン事務所こそが、彼女に最も帰属感を与えてくれる場所だった。
車で中腹デザインに到着し、まだデザインスペースに入る前に、笑い声が聞こえてきた。
小山千恵子はそっと近づき、熊谷玲子が皆に何かを話しているのを聞いた。
「……あの白いドレスは、実はパールホワイトシルクの端切れで作ったものなのよ。なぜか巡回展に選ばれてしまって、私の作品だとは認めたくなかったのに、桜井美月に気に入られてしまったなんて……」
戸田さんが笑いながら言った。「あの女性って、そういうセンスよね。既製服以外は、私たちの小山本部長の真似をするだけだもの」
熊谷玲子は嘲笑い、声には軽蔑が含まれていた。「そうよ、彼女は昔からそうだった。今回のドレスを彼女に送るのはちょうどいいわ。昔は私を踏みつけにしていたけど、今は施しと同情を受けるだけの身分になったのだから」
ウィリアムは回転椅子に逆向きに座り、彼もゴシップ好きな顔で会話に加わった。
「ねえ、聞いたよ。桜井美月が刑務所に行って、あの女性の汚職犯に会ったらしいよ」
小山千恵子は眉をひそめ、心が沈んだ。
桜井美月はまた何を企んでいるのだろうか?
うっかり思考に沈んでいると、目ざとくウィリアムに気づかれた。
「師妹、なぜそこで盗み聞きしているの?」
小山千恵子は我に返り、彼を睨みつけながら、堂々と自分のデザインテーブルに歩み寄り、バッグを置いた。
「桜井美月が面会に行ったって?どういうこと?」
ウィリアムは眉を上げ、肩をすくめた。「誰が知るものか、あの二人の犯罪者と何か関係があるのかもしれないね」
小山千恵子は首を振った。「ありえないわ。もしそうなら、彼女はもっと疑いを避けるはず。弁護士を立てるだろうけど、自分から出向くことはないはず」
熊谷玲子は眉をひそめた。「あの日、会場には子供たちがたくさんいたわ。桜井美月はまさか——」
小山千恵子の目が冷たくなり、喉が乾いた。突然何かに気づいたようだった。
「桜井美月は、単に面会に行っただけじゃない……」