第454章 車椅子の男は彼?

桜井美月は胸が上下に揺れ、まだ乾いていない髪から水が滴り落ち、心の中の怒りをもはや抑えることができなかった。

「浅野秀正、あなたは彼の命が欲しいの?彼はもう——」

「もうどうなった?もう病気で死にそうだって?ハハハ——」

男は狂ったように笑い、嘲笑した。「桜井美月、もし当初お前が小山千恵子が白血病で一人で死ぬと自信満々に思っていなかったら、今頃こんな状況にはなっていなかっただろう」

桜井美月は目を閉じ、屈辱で体が硬直したが、反論することができなかった。

かつての屈辱的な記憶が再び押し寄せてきた。

あの時、彼女が小山千恵子の死を見届けることができていたら、どれほど良かっただろう!

桜井美月は心を鬼にして、唇を少し震わせながら言った。「そうよ、私は彼女の命を奪うところだった。でも今それを言っても、何の意味があるの?」

浅野秀正は冷たく鼻を鳴らし、服を着替えて出ていく準備をした。

「意味はお前に教えてやる。これだけ長い間、お前は少しも成長していない。それに、桜井美月、お前はもう闘志を失い、無用の人間だ。自分のことは自分で何とかしろ」

ドアがバタンと閉まり、桜井美月もびくっとして、心が氷の穴に落ちたようだった。

闘志?

おそらく彼女は屈辱に慣れすぎて、徐々に闘志を失ってしまったのだろう。

黒川芽衣はすでに勢いを失い、自分の身を守るのも難しい。桜井美月も、自分のために逃げ道を残しておく必要があることを知っていた。

しかし彼女は疲れていた。もう別の高い枝に登る力はなかった。毎日生きることが、すでにこんなにも困難なことになっていた。

桜井美月は疲れた様子で微笑んだ。

今日、車椅子に座っている浅野武樹を見て、彼女の心には一筋の慰めがあった。

彼女は人間でも幽霊でもない生き方をして、報いを受けた。しかし小山千恵子も同じではないか?

死から生還しようが、再婚しようが、結局は夫を失い、一人で一生を過ごすことになる。

結局のところ、彼女たちの間に、何の違いがあるというのだろう?

最後には、みな白骨の山となる。

森の別荘。

夕日が沈みかけていたが、小山千恵子はまったく気づいていなかった。

病院から帰ってきた後、彼女は少し仮眠をとった。

昨夜は浅野武樹の病気を心配して、一晩ほとんど眠れなかった。