第468章 浅野武樹、振り返って

黒川奥様を泉の別荘に送り届けた後、小山千恵子は急いで森の別荘に戻った。

広々とした私用の飛行場では、新国へ向かう私用機の準備が整いつつあった。

藤原晴子は車に寄りかかり、寺田通が最後の荷物を取りに来るのを見ながら、ようやくスマホから目を上げた。

「浅野遥の罪を暴露する記事を、ついにメディアが掲載してくれたわ。千恵子が集めた証拠のおかげで、今では帝都の公式メディアまでが記事を出しているわ」

寺田通は微笑み、目に愛情を滲ませた。「さすがだね。浅野遥はこれで神の座から転落したな。君たち姉妹が本気を出すと、容赦ないね」

藤原晴子は二つのバッグを持ち上げ、感慨深げに彼を見つめた。

「あなたも不思議よね。卒業してすぐに浅野家に入り、浅野武樹の下でずっと働いてきたのに、今では逆に、浅野家に致命的な一撃を与えたのはあなたなんだから」

寺田通は自然に藤原晴子の手からバッグを受け取り、儒雅で礼儀正しく微笑んだ。

「致命的な一撃とまでは言えないよ。浅野武樹が去った後、浅野グループはすでに空っぽの殻になっていた。株価の暴落も時間の問題だった。僕はただそれを加速させただけさ」

荷物を全て積み終えると、寺田通は手の埃を払い、遠くの人影を見つめた。

夕日の下、千葉隆弘が小山優子と浅野早志を連れて走り回っていた。

藤原晴子は寺田通の視線の先を見て、感慨深く言った。「千恵子と知り合った時、彼女の人生がこんなに曲折に満ちたものになるとは思いもしなかったわ」

寺田通は彼女の肩を抱き、軽く笑った。「そうだね、僕が君と知り合った時、君と一生を共にしたいと思うようになるとは思いもしなかった」

藤原晴子は笑っていたが、突然固まり、少し戸惑ったような目で隣の優しい男性を見た。

「あなた...何て言ったの?」

寺田通は目を赤らめ、興奮した様子でポケットから美しい指輪ケースを取り出し、片膝をついて誠実な表情を浮かべた。

「藤原晴子、僕と結婚して、一生を共にしてくれませんか?」

藤原晴子は驚きで口を覆い、瞳孔が震え、思いがけず目に涙が浮かんだ。

彼女は寺田通がプロポーズする予定だと知っていたが、このタイミングでプロポーズするとは全く予想していなかった。

小山千恵子は狡猾に笑いながら、こっそり近づいてスマホで撮影していた。