山田進は芸術棟を出ると、外は日差しが強く、先ほどの少年のような若者たちが、暑さ対策の飲み物を持って中に入っていくところだった。
以前、彼もその一人だった。母の作った漢方茶が大好きで、マグカップに一杯入れて、他人の洗練された飲み物に文句を言ったことは一度もなかった。
自分でもわかっていた。望月あかりがすべてを知ったら、彼女は彼と絶縁するだろう。それでも彼は我を通し、まるで魔が差したように望月あかりを騙し続けた。
すべての行動は、自分が間違っていないことを証明するためだった。
最初、彼は本当に望月あかりが金に貪欲な人間だと信じていた。でもその後は?
付き合ってきたこの数年間、彼の心の中では望月あかりがそんな人間ではないことを知っていた。
彼の滑稽なプライドが、自分が彼女を誤解していたことを認めようとせず、この数年間の借りが大きすぎて、自分の結論を覆すことができなかった。
時が経つほど、借りは増えていった。
彼は臆病者で、少しでも手がかりがあれば望月あかりに罪を着せ、自分の借りを正当化した。
しかし忘れていた。毒を飲んで渇きを癒すのは、いつか毒が回る日が来ることを。
望月あかりには新しい友人と生活があり、もう彼を必要としていない。
彼女はとても素晴らしい人だから、きっと好きになる人がいるはずだ。
この純粋なお人好しの女の子は、少しでも優しくされれば、全財産を差し出してしまうような人だ。
以前の彼に対してそうだったように。
山田進は頭がくらくらし、体がふらついた。
「大丈夫ですか?」突然誰かに支えられ、耳元で聞き覚えのある声がした。山田進が振り返ると、あどけない顔があり、しばらく考えたが誰だか思い出せなかった。
「あ...山田坊ちゃん」その女の子は山田進のことを認識し、嬉しそうに言った。「以前一緒に食事をしましたよね。私、望月と申します。覚えていますか?」
食事...山田進はぼんやりと思い出した。これはあの「若い」女子学生ではないか?
そうか、彼女は望月あかりの同級生なのだ。
木村平助が言っていた。この女の子も奨学金を受けている学生で、芸大で望月あかりとは違う学科に通っているのだと。
彼が出会った時、この女の子はレストランでアルバイトをしていた。彼は山田進が望月あかりに夢中なのを見て、望月に近づこうと考えた。