第58章・釈明

山田進はオフィスで電話を切ったところ、木村平助が罵りながら入ってきた。

「このクソガキめ、俺様の目の前で裏をかこうとするなんて、ぶっ殺してやる。でなきゃ俺の名前を逆さまに書いてやる！」木村平助は歯ぎしりしながら、山田進に約束した。「進兄さん、怒らないでください。芸大には既に話をつけました。あいつを懲らしめる方法があります！」

望月あかりを告発する勇気があるだけでなく、プライベートな集まりで無断で録画するなんて、大きなタブーを犯したんだ！

私たちのルールも知らないくせに、金持ちの中に入り込もうとする。まずは教訓を与えてやる！

山田進は壁に掛かっている絵画を見つめたまま黙っていた。思考は既に遥か彼方へと飛んでいた。

彼女はきっと多くの人から非難を受けているだろう。あんなに頑固な彼女は、表面上は強がっているけれど、心の中はどれほど辛いことか。

「進兄さん、今頃望月あかりはどこかで傷ついているかもしれませんよ。慰めに行って、少しでもいい印象を与えたらどうですか？ここで一本の木の絵を見つめていても意味ないでしょう？」木村平助は彼と並んでこの絵を見ていたが、絵の下の名前を見て初めて山田進が何に没頭しているのかを理解した。

なるほど、今は望月あかりに相手にされないから、彼女の絵を見ながら反省しているというわけか？

彼の進兄さんは本当に新時代の良い男だ。木村平助は見れば見るほど気に入って、山田進の写真を撮って記念碑でも建てて贈りたい気分だった。

残念ながら、望月あかりの性格は、彼の母親に三割似ているどころか、まさに母親の若いバージョンプラスだ。進兄さんが妻を待つ石になったとしても、おそらく無駄だろう。

若い女性が恋の傷を負うと、心が岩よりも硬くなるものなのか？

山田進は芸大に行きたかったが、あの「若奥様」という言葉を思い出すと、胸が引き裂かれるような痛みを感じた。望月あかりは他人のものになってしまった。

木村平助は山田進が自分に構う気配がないのを見て、座って携帯をいじり始めた。彼は芸大の学生をたくさん知っていたので、今は彼らに連絡を取って、望月に優しくするよう頼まなければならない。