第47章・別れ

帰り道で、望月あかりは手首の腕輪を撫でながら、山田進に言った。「私たちが借りていた古いアパートに行きましょう。忘れ物があるの」

山田進は心が落ち着かず、彼女の言葉に従って団地へと向かった。

ここは長い間人が住んでいなかった。山田進が望月あかりの前で正体を明かしてから、もうここの管理をしていなかった。

古いアパートは埃がたまりやすく、家具には埃の層が覆っていた。山田進が玄関の棚の上に鍵を置いたとき、そこにはすでに鍵が置かれており、同じように埃に覆われていた。長い間そこに置かれていたようだった。

望月あかりのものだ、と山田進は不味いと思った。

望月あかりは埃を気にしなかった。以前は山田進が出張から帰ってくると、必ず部屋の掃除をしていた。

今考えると、彼女に掃除をしてもらう必要など全くなかった。家にいるメイドたちは、誰もが彼女よりプロフェッショナルだった。

しかし、彼はこの部屋が埃まみれになるのを放置していた。結局のところ、ここを大切に思っていなかったのだ。

望月あかりは埃まみれのソファに座り、端午の節句の日と全く同じ姿勢をとった。

頭上の明かりがまぶしく、蛾が羽ばたき、命知らずにランプシェードに突っ込んでいた。

「あかり...帰ろう。ここは汚すぎる」山田進は言葉を選びながら、無理して彼女の隣に座り、急いで謝った。「腕輪のことで誤解して申し訳ない。過去のことは水に流そうって約束したじゃないか。なぜ今日また蒸し返すんだ?」

その言葉には、望月あかりが過去の話を蒸し返したことを責めるような調子さえあった。

望月あかりは携帯を開き、動画を山田進に見せた。

「あの日、私に隠していることはないかって聞いたとき、もう過去のことだって言ったわね。今日、あなたと若葉加奈子の動画を受け取ったわ」

山田進は眉をひそめ、動画を見終わると急いで否定した。「違うんだ!あかり、誤解しないでくれ。若葉加奈子が腕のいい職人を知っていると言って、この数日前に会っただけだ。ゆうゆうも一緒にいたし、彼女とは何の接触もなかった!本当だ!あかり、信じてくれ」

この数日間、望月あかりが彼と若葉加奈子のことを誤解していると思うと、山田進は焦りを感じた。

若葉加奈子のことは深く追及できない。以前彼女と接触していたことがバレたら、望月あかりの性格では、必ず大騒ぎになるはずだ!