古い家屋は百万元で売れるのは、この地域の相場からすると高額だった。望月あかりの家は四十数平米しかなく、この辺りの一般的なマンションでも一平米あたり一万元程度だった。
これほどの価格がつけられたのは、立地条件と望月紀夫の状元(科挙首席合格者)という「バフ」効果、そして学習ノートの付属があったからだ。
望月あかりは望月紀夫に付き添って契約を交わし、双方で早めに引っ越して家を空けることを約束した。望月あかりと望月紀夫は持っていく物を梱包して整理したが、実際には家族写真一枚だけだった。
望月紀夫の服は取り出してみると全て着られないほど古くなっており、家具は一緒に売却し、寝具も古いものだった。国立大学の新入生ハンドブックには持参不要と書かれていた。
望月あかりは結局何も持たせず、家の売却金を持って、望月紀夫はリュックを背負い、二人で一つの荷物を持って横浜市へ戻った。
出発前に兄妹は亡き両親に参拝し、家族に別れを告げた。
望月紀夫の実父は早くに亡くなっており、二人は恋愛結婚で、死後は一緒に埋葬されることを決めていた。
そのため、望月紀夫の両親は合葬墓だが、望月あかりの両親は別々に埋葬されていた。
望月あかりは父の独り墓を見つめ、長年の疎遠を恨んでいた。たとえ彼女を取り戻そうとしたとしても。
父親としては許せても、妻としては、母は彼と何の関わりも持ちたくないだろうと思った。
幼い頃、祖母が彼女を叩く時、死んだ母親と同じように嫌な奴だとよく罵られた。
自分の命と引き換えに得た家から娘が追い出されたのなら、死んでも許せないはずだ。
このまま孤独でいなさい、望月あかりはしゃがみ込んだ。十数年の時を経て、母はもうここにはいない。
輪廻転生か、消滅か。
もう二度と会うことはないだろう。
二人は長距離バスに乗って出発し、バスは遠ざかっていく。望月紀夫は望月あかりに寄りかかり、終始振り返ることはなかった。
これからは、姉が彼の家族だ。
……
林元紀は最近時間があり、車で駅まで望月あかりと望月紀夫を迎えに来た。
「林先輩、今日はありがとうございます」三人が車に乗り込み、望月あかりは礼を言った。
林元紀は首を振り、「お礼なんて。後で見てもらう部屋を気に入ってくれればいいんだ」と言った。