二人が階段を上がり、望月あかりと山田進の二人だけが残された。
「あかり、彼がなぜここにいるの?」山田進は尋ねた。林元紀がなぜここにいるのか、二人の関係を聞きたかった。無意識のうちに望月あかりに近づこうとしたが、彼女は後ずさりした。
小さな一歩が、距離を生んだ。
「あかり……」山田進は辛かった。謝罪の言葉は全て、林元紀の存在によって封じ込められ、望月あかりを問い詰めることさえできなかった。
山田進は軽く咳をし、煙を吐き出してから、やっとの思いで言った。「この数日出張していて、帰ってきてあなたの家に行ったら、引っ越していたことを知った。LINEを送っても返信がなく、電話もつながらなくて……体が弱いあなたのことが心配だった。」
「私なんて貧乏学生、心配することなんてないわ。」望月あかりは笑った。彼女の低血糖で公共の場で倒れたことは一度や二度ではなかった。林元紀に出会った時以外は、基本的に自分で片隅で休んで、気を失っても目が覚めるまで待って、そのまま立ち去っていた。病院に行く費用も節約できた。