翌日の朝五時、望月あかりはまだ起きていなかったが、山田進は早起きをした。
同じく早起きしたのは、家政婦さんと運転手の中川おじさんだった。家政婦さんは彼の家で十年働いており、山田進が朝食を彼女に持っていくことを知っていたので、女の子が好きそうな、美味しくて太らない料理を何品も一生懸命作った。中川おじさんが持ってきた時には大きな袋が二つあった。
山田進は朝食を一つ一つ皿に盛り付け、望月あかりの部屋のドアをノックして、テーブルに朝食を用意したことを伝えた。
「あかり、朝食を用意したよ。後で食べに来てね」山田進は静かにドアをノックし、彼女の休息を邪魔しないように小声で言った。「先に行くけど、また後で様子を見に来るよ」
中からは返事がなく、望月あかりが起きているのに無視しているのか、それとも寝ていて聞こえていないのかわからなかった。
山田進は気にせず、服を着替えて出かけた。
もし中に入ってキスできたら、この朝はもっと完璧だったのに。
朝のマンションでは、早起きのおじいさんやおばあさんたちが、いつもの近所の住人で、年を取って睡眠時間が少なくなり、一緒に朝の運動をしながらおしゃべりをしていた。
本来なら山田進のような見知らぬ人は珍しくなく、この辺りには近くの大学生がよく住んでいた。
しかし山田進は人に会うたびに挨拶をし、タバコを配り、三階の望月あかりの面倒を見てほしいと頼んだ。自分の彼女が最近卒業制作で忙しく早朝から夜遅くまで外出していて、もし近所の方々に迷惑をかけたら、どうか大目に見てほしいと。
山田進は目が利いていて、常住の家主に会うと、運転手に高級タバコを一箱ずつ配らせた。
近所の人々は集まると、よくおしゃべりをしていた。三階に住む姉弟は、一人は芸大の優等生で、もう一人は国立大学の学生で、二人とも親がおらず、姉が弟を育て上げたという。
思いがけないことに、姉が付き合い始めた彼氏もこんなに礼儀正しい人だった。
山田進は外で自分の「正統な彼氏」としての評判を確立し、望月あかりは朝外出する時、幽霊でも見たかのように驚いた。近所の人々が彼女に挨拶をしてきたのだから。
……
永陽グループで、山田進は早朝に山田お父さんのオフィスへ向かった。