第82章「証拠」

その書類には望月紀夫の叔父の生涯における全ての出来事が書かれており、若い頃にどの村の未亡人と怪しい関係にあったかまで詳細に記されていた。

何年何月に、望月紀夫の叔父がライバルを「処理」し、庶民を抑圧し、望月紀夫を殴打し、この件で誰にいくら支払い、最後に誰に仲裁を依頼したかまで。

あの望月紀夫暴行事件で彼を助けた者たちの名前は、今では全て汚職ニュースで逮捕者として報じられている。

後ろには望月紀夫の叔父の銀行口座の取引履歴があり、全ての金の行き先、専門家による分析でその金が誰に渡った可能性があるのか、そして彼の叔父の人脈図が蜘蛛の巣のように細かく記されており、重要人物には印が付けられ、基本情報も横に書き添えられていた。

「どうしてこんなものを持っているの?」中の情報があまりにも詳細で、望月あかりは震え上がった。これは...法的な範囲を遥かに超えている。

「私なりの方法があるさ。義弟を救うためには万全の策を練り、相手の不利な証拠をたくさん集めなければならない。そうでなければ、こんなにタイミングよく彼の叔父が調査され、望月紀夫が早く出てこられると思うか」山田進は笑いながら言った。得意げな様子は見せないものの、状況を掌握している落ち着きがあった。彼は彼女の耳元に顔を寄せ、輪郭に沿って優しくキスをしながら囁いた。「あかり、安心して私の山田夫人になりなさい。これからは誰かが気に入らなければ、いくらでも方法はある」

彼の周りには望月あかりの知らない殺気が漂っていた。あかりはこのような攻撃的な山田進に馴染めず、強く彼を押しのけた。

山田進は不意を突かれてベッドの革張りの枕元に倒れこんだ。痛くはなかったが、望月あかりの力は相当強く、容赦なかった。山田進も怒らず、起き上がってベッドサイドテーブルのワイングラスを手に取り、再びあかりの傍らに寄り掛かった。

先ほどの一瞬の冷酷さは望月あかりの錯覚だったかのように、彼は相変わらず他人の目には「軟弱者」に映り、権力と地位があるのに愚かにも望月あかりに執着していた。

彼は誘うように囁いた。「一緒に一杯飲めば教えてあげる。このワインはとても優しい味わいで、口に含むと余韻がある。一口含んで飲み込まずにいれば、数分でその味わいが分かるよ」