修正後:第121章・下心

あれこれ考えた末、望月あかりは田中かなたのことを山田進に話さなかった。山田進が田中かなたにお金を返せと言われていることを知ったら、きっと田中かなたを追い出すだろうと思ったからだ。

月曜日、望月あかりはいつもと違って、山田進の服装を選び、髪型を整え、時間通りに送り出して仕事に行かせた。

普段なら彼女が放っておくと、彼は必ず30分くらい手間取るのだった。

望月あかりは成田まことに自分と田中かなたを学校まで送らせた。二人は寮に戻らず、学校を一周した。望月あかりは成田まことが遠くに行ったと見当をつけ、田中かなたを芸術棟に連れて行き、藤原信に連絡して不動産屋に案内してもらった。

田中かなたは深夜に追い出されたものの、出る時に用心して身分証明書を持ち出していた。

二人で不動産屋に会いに行ったが、結果は思わしくなかった。

契約書には白黒はっきりと、150万円の手付金について、どちらかが契約を破棄した場合は相手方に10パーセントの違約金を支払うと書かれていた。

150万円の違約金は15万円で、田中かなたがお金を取り戻そうとすれば、違約金を払わなければならず、各種手数料を差し引くと、手元に残るのは130万円ちょっとで、望月あかりに68万円を返し、両親から借りた100万円を考えると、65万円しか残らず、35万円を無駄にしてしまうことになる。

それは35円ではなく、簡単に諦められる金額ではなかった。

不動産屋との面会後、藤原信は田中かなたを匠工房に連れて行き、応接室で次の対応を考えさせ、自身は事務所で望月あかりと話をした。

「あれは完全な罠だよ。君のルームメイトの彼氏は不動産屋と示し合わせていたんだ。違約金が法外で、今は返金を拒否している。契約時には3人が立ち会っていて、今はあの屑が裏切るのは確実だ。裁判を起こしても勝ち目はない」藤原信は喉が渇くほど話し、不動産屋で話を聞き出してきた後、冷水を2杯立て続けに飲んでようやく喉の渇きを癒した。

「あの子も馬鹿だよ。あのマンションは購入資格が必要で、たとえ男が残金を払っても、購入資格の問題で、不動産登記には男の名前しか載せられない」要するに、この物件について宮崎翔陽がどう処分を決めようと、最初から田中かなたの150万円を騙し取る目的だったということだ。

本当に下水道の汚い鼠だと、望月あかりは心の中で罵った。