田中かなたの顔の青あざが消えてから、彼女の状態と気分は良くなり、よく彼女とアトリエでモネの絵画を研究するようになった。
望月あかりは人のことを気にしすぎない性格で、相手の自尊心を尊重する人だった。田中かなたが話さないなら、彼女も聞かなかった。
もちろん、彼女にはもう田中かなたを助ける余裕もなかった。確かに手持ちのお金がなかったのだ。
彼女は匠工房の開業のことを山田進に告げた。山田進が望月あかりが早く教えてくれなかったことに怒るだろうと思っていたが、意外にも山田進は眉一つ動かさず、ただ望月あかりを褒め、資金は足りているかと尋ねただけだった。
彼の名義のオフィスビルがあり、一フロアを望月あかりに提供して、会社を自分のオフィスビルに移すように勧めた。
望月あかりは同意せず、このフロアも賃貸ではなく購入したものだと告げた。いずれ知ることになるなら、自分から話した方がいいと思ったのだ。