第122章・金を集める

田中かなたの顔の青あざが消えてから、彼女の状態と気分は良くなり、よく彼女とアトリエでモネの絵画を研究するようになった。

望月あかりは人のことを気にしすぎない性格で、相手の自尊心を尊重する人だった。田中かなたが話さないなら、彼女も聞かなかった。

もちろん、彼女にはもう田中かなたを助ける余裕もなかった。確かに手持ちのお金がなかったのだ。

彼女は匠工房の開業のことを山田進に告げた。山田進が望月あかりが早く教えてくれなかったことに怒るだろうと思っていたが、意外にも山田進は眉一つ動かさず、ただ望月あかりを褒め、資金は足りているかと尋ねただけだった。

彼の名義のオフィスビルがあり、一フロアを望月あかりに提供して、会社を自分のオフィスビルに移すように勧めた。

望月あかりは同意せず、このフロアも賃貸ではなく購入したものだと告げた。いずれ知ることになるなら、自分から話した方がいいと思ったのだ。

山田進は購入したと聞いて、それ以上何も言わなかった。

この数日間、匠工房はビジネスホテルの内装工事を請け負い、望月あかりと藤原信は匠工房で残業してデザインを行っていた。山田進は接待があるときは、時間を見計らって接待を終えてから匠工房に彼女を迎えに来た。接待がないときは、匠工房で彼女に付き添い、田中かなたが夕食を用意してくれた。

山田進は相変わらず食事に文句をつけたが、望月あかりの圧力のもと、表向きは我慢していた。

田中かなたはとても嬉しそうで、積極的に山田進に何が食べたいか尋ね、望月あかりが忙しいなら自分が作ると言った。望月あかりだけが気づかなかったが、田中かなたは彼の前で自分の賢さをアピールしていたのだ。

……

山田進も部外者である田中かなたの下心など気にする余裕はなかった。数日前、望月あかりから藤原信と一緒にインテリアデザイン会社を立ち上げたと聞かされたのだ。

山田進の心中は穏やかではなかった。自分の妻が彼に内緒で同級生と会社を設立し、しかもその同級生は以前、彼の目の前で林元紀と望月あかりを師匠と師匠の奥さんと呼んでいた。この屈辱を我慢できるはずがない。

しかも共同経営だ。彼の妻が他人と共同経営する必要があるのか?これは彼が妻に対して不十分だという侮辱ではないのか?