おとぎ話の中では、真夜中を過ぎると全てが元の姿に戻るものですが、望月あかりの夫と彼女は無事に真夜中を過ごしました。しかし、魔法はやはり魔法で、昇る朝日を見ることはできないようでした。
山田進は彼女と断片的に会話を交わし、望月あかりは一日中疲れ果てて、最後には声を出すのも億劫になり、徐々に眠りに落ちていきました。
「寝ていいよ、日の出の時に起こすから」
耳元で彼が最後に言った言葉を聞きながら、望月あかりは考えました。彼らは新しい関係を始めるのだから、ネガティブな感情を結婚生活に持ち込むべきではない。彼女の人生は十分苦しかったのだから、自分と山田進の幸せを邪魔してはいけないと。
明日は、きっと晴れるはず。
新しい身分で、新たな始まり。
そばで小さな物音がし、山田進がベッドサイドテーブルに置いていた携帯電話の画面が突然明るくなりました。電話はバイブレーション設定で、テーブルの上でブルブルと震えていました。
山田進は起き上がって携帯を手に取り、望月あかりを起こさないようにバスルームで電話に出ました。
彼が出て行くと同時に、望月あかりは目を開けました。窓の外はまだ真っ暗でした。
二人が付き合い始めてから、一度だけ携帯電話で親密な時間を邪魔されたことがありました。それ以来、彼の仕事用の電話番号は夜間はサイレントにしており、基本的に誰も彼に連絡が取れませんでした。
今電話をかけてきているのは私用の番号に違いなく、この時間に私用の番号にかけてくる人は限られていました。
「もしもし、若葉いわお...」望月あかりは有用な情報を捉えました。
目を閉じながら、可笑しく思いました。こんな大切な夜に、若葉いわおまでも首を突っ込んでくるなんて、この夫婦は本当に因縁めいています。
望月あかりは森結衣を殴ったことに関係があるのではないかと推測しました。若葉いわおがこのことを山田進に話したら、彼がどう対応するのか見てみたいと思いました。
しかし、この若葉いわおも馬鹿です。事を起こすタイミングが遅すぎるのではないでしょうか?
小説の中では、新郎が部屋に入ったとたんに呼び出されるものですよ。
今この時間では、するべきことは全て終わっています。