おとぎ話の中では、真夜中を過ぎると全てが元の姿に戻るものですが、望月あかりの夫と彼女は無事に真夜中を過ごしました。しかし、魔法はやはり魔法で、昇る朝日を見ることはできないようでした。
山田進は彼女と断片的に会話を交わし、望月あかりは一日中疲れ果てて、最後には声を出すのも億劫になり、徐々に眠りに落ちていきました。
「寝ていいよ、日の出の時に起こすから」
耳元で彼が最後に言った言葉を聞きながら、望月あかりは考えました。彼らは新しい関係を始めるのだから、ネガティブな感情を結婚生活に持ち込むべきではない。彼女の人生は十分苦しかったのだから、自分と山田進の幸せを邪魔してはいけないと。
明日は、きっと晴れるはず。
新しい身分で、新たな始まり。
そばで小さな物音がし、山田進がベッドサイドテーブルに置いていた携帯電話の画面が突然明るくなりました。電話はバイブレーション設定で、テーブルの上でブルブルと震えていました。