家は内装工事がされておらず、天井には低ワットの電球が一つだけ取り付けられており、点けても物がかろうじて見える程度だった。
望月あかりは少しお腹が空いて、何か食べ物を買いに行こうと思ったが、携帯電話すら持っていないことを思い出した。
でも彼女は確かに山田進に会いたくなかったので、元の場所に座り直すしかなかった。
ドアの外から鈍い音のノックが聞こえた。リズミカルで、三回ずつだった。
この階には二世帯があり、どちらもスケルトン状態で人が住んでいなかったため、間違えてノックしているはずはない。望月あかりは立ち上がってドア覗き穴から予想外の顔を見た。
彼は体にフィットした黒いスーツを着て、眼鏡が目を隠し、唇の端だけが冷たい弧を描いていた。
斉藤玲人が弁当箱を持ってドアの外に立っていた。