自室に戻ると、山田進はまだ深く眠っていて、ネクタイは歪み、靴も脱いでいなかった。望月あかりが服を脱がせようとすると、彼は体を反転させ、布団にしがみついた。
体中がアルコールの匂いを漂わせていて、それは強い白酒の香りだった。
2分もしないうちに、山田進は深い眠りに落ち、さらに大きないびきをかき始めた。
以前なら、望月あかりは必ず彼を起こすか、蹴り出して、自分できちんとしてから戻ってくるように言ったはずだ。しかし今は望月紀夫のことがあるので、そこまで冷たくすることはできなかった。
望月あかりは体の具合が悪く大きな動きができないため、彼の靴とネクタイを脱がせ、ボタンを外して楽にしてやることしかできなかった。彼の隣に横たわり、アルコールの息を我慢した。
望月紀夫は本当に叔父を殺しかけていて、山田進は確かに個人的なコネを使って望月紀夫を助けた。ただ、彼はそのことを利用して結婚を迫っただけだった。
翌日、山田進は望月あかりに揺り起こされた。
「あかり、どうしたの?」昨日の二日酔いで、今朝は頭がぼんやりしていた山田進は、もう少し寝たいと思った。
そして、望月あかりが望月紀夫のことを心配しているのかもしれないと思い、横になりながら説明した。「紀夫さんの件は解決したから、心配しないで。この事件は2日以内に結審して、もう誰も蒸し返すことはないよ。」
しかし望月あかりは彼の言葉に答えず、耳をつかんで引っ張り起こした。
「痛い!痛い!痛い!あかり、優しくして!」山田進は痛みで目が覚め、望月あかりについて起き上がり、全身鏡の前まで引っ張られた。
そこで初めて自分の乱れた姿を目にした。髪の毛は逆立ち、シャツは半分はだけて皺だらけで体にぶら下がり、靴下も片方なくなっていた。
自分の体臭を嗅いでみると、山田進は「しまった」と思った。望月あかりは彼女のベッドで汚い姿でいることを最も嫌うのに、今の状態では必ず彼と清算するつもりだろう。
山田進はへへと馬鹿笑いをしながら、強引に望月あかりに寄り添った。「ごめん、奥さん。昨日は飲みすぎて帰ってきちゃって、うるさかった?」
望月あかりは彼を睨みつけ、スマートフォンで録音を再生した。雷のように響くいびきの音が流れ、望月あかりは後半夜も眠れなかったという。