第160章・つわり

山田進はずっと休暇に行きたいと言っていたが、望月あかりは彼と一緒に行きたくなかった。今日、突然その気になったのは、この間、望月紀夫のために奔走してくれた彼への恩返しだった。食卓で酔いつぶれるまで飲んで、きっと頭を下げて謝罪の言葉をたくさん言ったのだろう。

山田進の荷物を自ら手伝って、二人は休暇に出かけた。

山田進は二日酔いで運転できず、二人は後部座席に座った。山田進は頭がくらくらして望月あかりに寄りかかって話をしていたが、疲れて眠ってしまった。

望月あかりは車載テレビを見ていた。彼女の好きな小説がドラマ化されており、なかなか良い出来栄えだった。楽しい場面を見ているところで、車が止まった。

従業員が車を停めに来て、山田進は望月あかりの手を引いて中へ入っていった。

そこは避暑地のリゾート施設で、ヨーロッパ風の城のような建物だった。周囲の庭園や噴水はすべてバロック様式で、ギリシャ神話の有名な彫刻が置かれていた。望月あかりは興味を持ち、首を上げて周りを観察した。

従業員たちはメイド服やテールコートを着ており、確かに贅沢な雰囲気を醸し出していた。

二人は部屋に着いた。内装は金ぴかで豪華絢爛な感じで、バロック調の装飾は贅沢でありながら趣味の良いものだった。

山田進はまだ疲れが取れず、簡単に体を洗ってベッドに横たわったまま動かなかった。

「あかり、背中がすごく痛いんだ。ちょっとマッサージしてくれない?」山田進はうつ伏せになって、片手で腰を押さえながら疲れを訴えた。

望月あかりは洗顔用品を置いて、山田進の背中をマッサージしに行った。そして冗談めかして言った。「腹筋を鍛えるって言ってたじゃない?ちょっと車に乗っただけで腰が痛くなるの?」

「それはあなたのために土下座したからでしょう?私のことを気遣ってくれないの?癒してよ。」やっと手柄を立てたので、もちろん彼女の前でそれを利用して甘えたかった。

彼女の手が疲れないように、長くはマッサージさせず、山田進は望月あかりを引き寄せて横たわらせた。望月あかりは横向きになってスマートフォンで小説を読んでいた。最近お腹が目立ってきて、妊娠が明らかになってきたため、横向きに寝るのが一番楽だった。