斉藤玲人が入ってきた時、望月あかりは無意識にひまわりの種をほとんど取り出していた。あかりが山田山彦のことを考えているのを知っていた斉藤は、あかりの前にしゃがみ込んで言った。「山彦のことを考えているの?」
あかりは頷いた。「山田進は彼をよく育てたわ。私のことを恨んでいないなんて。」
彼女の長い人生の大半は、父親への憎しみの中で過ごしてきた。生きているのに、自分のことを全く気にかけてくれない父親を憎んでいた。
彼女はずっと山田山彦のことを思い出したくなかった。そんな不安もあったからだ。でも彼は彼女を恨むどころか、プレゼントまで用意して、自分の最高の証明を見せて、彼女に嫌われることを恐れていた。
望月あかりは認めざるを得なかった。あの瞬間、彼女は逃げ出してしまったのだ。
「彼はとても可愛くて、成績も優秀で……」
「当たり前だよ。あなたの息子なんだから、きっと優秀なはずさ。」斉藤玲人も山田山彦のことが大好きで、こう言った。「彼が小さい頃、歩き方を覚える時、転んでも決して泣かなかった。保育園で友達と喧嘩しても、一度も負けたことがなくて、その度に山田進に耳を引っ張られて謝りに行かされて……」
「斉藤玲人?どうしてそんなことまで知っているの?」そんな細かいことまで知っているなんて。
「ずっと君の代わりに彼を見守っていたからさ。彼はずっと幸せに暮らしてきた。君が気にかけているのは分かっていた。ただ、まだこの子を受け入れる準備ができていなかっただけだ。」斉藤は言った。フランスで望月あかりは学業が忙しく、自分のことで精一杯だった。時々黙り込む時、彼は彼女が息子のことを考えているのを知っていた。
でも、この子の誕生には苦痛が伴っていて、望月あかりは無意識のうちに逃避していた。
「私たちが落ち着いたら、毎月彼を呼んで遊べるよ。これからは私たちと彼で三人家族になれる。」斉藤は慰めるように、あかりの悲しみを払いのけて言った。「君は子供のお母さんなんだから、面会する権利がある。忘れないで、君と彼は私にとってはぼうちゃんと母親なんだ。彼が生まれた時、最初に抱いたのは私だよ。」
彼は心から山田山彦を愛していた。たとえ山田進の血が半分流れていても、望月あかりの血が半分流れていることに変わりはなかった。
「うん、そのうち山田進と話し合いに行くわ。」