第174章 金賞

この展覧会は盛大で、主要メディアやソーシャルメディアが高価なカメラを持って、この芸術の祭典を取材に訪れていた。

会場には芸術を愛する多くの人々が集まり、その中には各界の成功者も少なくなかった。彼らは互いに褒め合い、優れた作品の前に立って、その商業的価値を評価していた。

望月あかりは群衆の中に立ち、この賑やかな集まりを見つめながら、頭の中のあの絵が再び目の前に浮かんできた。

金銭と信念が共存している。

芸術は今や金銭に仕えざるを得ない。金銭的価値があってこそ、より多くの人々が芸術性を高く評価するのだ。

彼女の静かな思索は、東洋の女性特有の神秘的な雰囲気を醸し出し、世俗から超然としていた。人々は思わず彼女に近づき、その謎に迫りたくなる。

例えば、カメラを持ったヴィータは、今日は愛の女神が自分に微笑んでくれていると感じていた。彼女に再会できたのだから。

「こんにちは、また会えましたね」今回、ヴィータは躊躇することなく、すぐに望月あかりに声をかけた。

望月あかりは自分の絵の前に立ち、ワイヤレスイヤホンで藤原信から匠工房の最近の動向を聞いていたため、このフランス人の青年と話す気分ではなかった。

しかしヴィータはそうは思わなかった。彼は愛の女神の導きを信じ、この東洋の少女をこのまま見逃すわけにはいかないと考えた。

「この絵は今回の金賞作品です。後ほど作者がスピーチをする予定です。中国系の方だと聞いています」ヴィータは中国系という話題で望月あかりの興味を引こうとしたが、効果はほとんどなかった。

ヴィータは諦めず、こう続けた。「彼女の熱狂的なファンは彼女をミニゴッホと呼んでいますが、彼女は一生ゴッホにはなりたくないと反論しました。まさに芸術家らしい個性ですね」

望月あかりは笑うだけで何も言わなかった。熱狂的なファンなどではなく、ただの対抗勢力が雇ったメディアが皮肉っぽく書いただけで、望月あかりが見かねて強く反論したのだった。

前方のステージでは開会式が始まり、主催者の責任者が挨拶をしていた。

「望月あかり、もうすぐ登壇です。スピーチの時は愛国心も忘れずに」イヤホンのチャンネルが切り替わり、土井あきらの声が彼女に注意を促した。

責任者のスピーチが終わり、望月あかりの簡単な紹介が行われた。