第171章・さようなら

離婚の件は、望月あかりの想像以上に順調で、法廷での審理を待つまでもなく解決した。山田進側の代理人弁護士は離婚に同意し、両者は顔を合わせることなく離婚判決を受け取った。

判決を受け取ると同時に、約束通り、山田山彦は世話をしていた家政婦に抱かれて永陽ビルに連れて来られた。山田進はロビーで待っており、子供を受け取ると、子供は大声で泣き始めた。まるで母親がいなくなったことを知っているかのように。

「山彦、悲しまないで。パパは必ずママを連れ戻すから」彼の声は力強く、子供は声を裂くように泣き、山田進も胸が張り裂けそうになりながら、子供を抱きしめて優しくあやした。

望月あかりは実践的な人で、子供が生まれたら必ず自分で世話をするだろう。彼は望月あかりが一人で子育てするのを心配して、こっそり親子教室に通い、赤ちゃんの世話の仕方を学んでいた。

山田進が子供をあやしながら、すぐに会社の周りに配置していた人々に望月あかりの行方を探させた。

彼の望月あかりに対する理解では、彼女は必ず近くで子供を見守っているはずだ。子供が安全に彼の手に渡ったことを確認してから、初めて安心するだろう。

しかし、ビルの周りを何度も探しても、望月あかりの姿は全く見つからなかった。

その時、望月あかりと斉藤玲人はすでにフランスへ向かう飛行機の中にいた。携帯電話で山田進が子供を抱いて彼女を探している様子を見た望月あかりは、動画を閉じて目を閉じて休んだ。

「安心した?」斉藤玲人は彼女の手から携帯電話を取り、カバンの中に入れた。「もし彼に会いたくなったら、私が国内で動画を撮って送るよ」

望月あかりは首を振った。「いいえ、もう彼に返したのだから、これからは会わない方がいい。後々面倒になるから」

これから山田進は他の人と結婚するだろう。山田山彦の世界に彼女がいない方が、もっと良い生活が送れるかもしれない。

斉藤玲人は頷き、彼女を静かに休ませた。

……

山田家の別荘で、山田お父さんと山田おかあさんはリビングで焦りながら待っていた。

山田進の車が戻ってくるのを見て、すぐに出迎えに行った。

「どうして…?」山田おかあさんが声を上げかけたが、山田進が小さな声で示すのを見て、抱いている山田山彦がちょうど寝たところだと分かった。