第172章「白髪」

山田進は卒業式を終えたが、あの絵を手に入れることはできなかった。

望月あかりの居場所を望月紀夫に尋ねようとしたが、逆に彼につかまれて殴られた。

「二度と俺の前に現れるな!見かけたら、その度に殴るぞ!」望月紀夫は歯ぎしりをしながら怒りを露わにした。姉は一言も言わずに離婚し、今も海外で姿を隠している。すべては彼のせいだ!全部彼のせいだ!

山田進は反撃せず、芸大を出た後も家に帰りたくなかった。両親が見たら心配するだろうし、息子は彼が近づくと泣き出してしまう。あれこれ考えた末、不思議と彼らが以前借りていた古いアパートまで来ていた。

あの頃、望月あかりは可愛らしい女の子で、頭の中は絵と彼のことだけだった。

山田進は足の怪我を押して、一歩一歩団地の中を歩いていった。通りすがりの人々は彼を避けて通った。