第184話・USBメモリ

「あかり、泣かないで。もう二度と迷惑をかけないから。子供のことも譲るよ」山田進は最も申し訳なく思っている望月あかりを抱きしめながら、なだめるように言った。「これからは、会いたくないと言うなら、僕から会いに行くことはしないよ」

望月あかりは思う存分泣いた後、立ち上がって言った。「私、斉藤玲人と結婚する予定なの。山彦に私たちが離婚したことを早めに伝えてほしいわ」

子供のことだけでなく、外の多くの人も彼らの離婚を知らなかった。昨日出会った夫人は、まだ彼女を山田夫人と間違えていたほどだ。

彼女が一方的に否定すると、彼にどんな影響があるかわからないので、山田進と相談する必要があった。

この件を公表しないのは、山田進の私心があった。山彦がまだ小さいので、両親の離婚を他人に知られると、様々な下心を持った人々に近づかれると考えていたからだ。