第163章 惑わす_2

山田進は頷き、慎重な様子を見せた。

「緑の帽子が見え隠れしているのに、まるで何事もないかのように我慢し続けるなんて、山田坊ちゃまは本当に並外れた人物だわ」望月あかりは冷笑いながら、彼の寛容さに感心するふりをした。

その言葉には偏りがあった。彼女と斉藤玲人の間には何も証拠を掴まれていなかったが、彼女は敢えて彼の心に針を刺そうとした。かつての若葉加奈子のように。

若葉加奈子のことは過去のものとなるだろうが、斉藤玲人のことは違う。

離婚しないなら耐え忍ぶしかない。そして彼女は時々その針を動かし、彼に痛みを忘れさせないようにするつもりだった。

「あかり、何を言っているんだ?!君がそんなことをするはずがないと分かっている。僕は君を疑っているわけじゃない。ただ斉藤玲人に騙されることを心配しているんだ」もう話が出たからには、山田進も遠慮なく言った。「斉藤玲人は良い人間じゃない。木村清香と土井くんの件に自ら関わり、それと引き換えに自分の明るい未来を手に入れようとしている。君は彼に近づきすぎてはいけない。あの野犬は君にまとわりついて離れないぞ」