望月あかりは毎日撮影現場で「泥まみれになって」いた。山田進は一ヶ月経って、再び望月あかりの前に現れた。彼は白髪交じりで、左手に杖をつき、歩くときには少しよろめき、右手で山田山彦を引いていた。
山田山彦は望月あかりを見ると、山田進の手を離して彼女の方へ走ってきた。
「ママ!」
望月あかりはちょうど「戦場」から這い出てきたところで、全身泥だらけだった。突然山田山彦が走ってくるのを見て、すぐに避けた。
「気をつけて、ママは土だらけよ」
山田進はゆっくりと歩いてきて言った。「君は絵を描くだけなのに、なぜ土の中で転がる必要があるんだ?」
なぜって?
それは二人の先輩の「抜擢」のせいだよ。彼らは国立美術館に巨匠の貴重な国画が来たと聞いて、二人で無断で出かけてしまった。望月あかりが知った時には、二人はもう飛行機が着陸する寸前だった。