第12章 「旦那様と呼べば許してあげる」

鈴木之恵は思わず首を縮めた。耳元のしびれる感覚が瞬時に血液と共に全身に広がった。

「藤田社長、私たちは離婚したんです。同じ部屋で寝ることも、同じ布団を使うこともできません。社長は主寝室にお戻りください。客室のベッドは硬すぎて、あなたの貴重な体には合いません」

彼女は震える声で、二人が協議離婚したという事実を再度思い出させた。彼が本当に何かをしようとするのが怖かった。

「お前は俺と同じ布団で寝るのが好きだったじゃないか?」

藤田深志の声には皮肉が込められていた。鈴木之恵は顔が熱くなり、まるで平手打ちを食らったような気分になった。彼の言葉は決して間違いではなかった。

結婚して最初の数ヶ月、彼は錦園にはあまり帰ってこず、よく他の家で一人で過ごしていた。彼女は様々な方法で彼を家に呼び戻そうとし、セクシーな寝間着まで着用した。当時は会えば情が生まれ、時間が経てば心が通じ合うと思っていた。自分の容姿には多少の自信があり、努力さえすれば彼の目に留まると信じていた。