時田言美と比べると、鈴木之恵は冷淡すぎるほど冷淡だった。
「彼だってそんなに長い脚じゃないのに、そんなに興奮することある?」
時田言美は夢見るような顔で言った。「イケメンも見たし、お金持ちも見たけど、この二つのトップレベルの条件を兼ね備えているのは、京都府では社長が一番よ。国民の旦那様って呼ばれるのも納得だわ」
鈴木之恵は皆と同じ方向に視線を向けた。遠くのボックス席で、藤田深志は成熟した雰囲気で宝石をちりばめた服装の女性と一緒に座っており、ビジネスの話をしているように見えた。
朝は細かいところまで気づかなかったが、今じっくり観察すると、上質なオーダーメイドスーツに深い青のネクタイを合わせ、手を伸ばすと袖口から濃い色のシャツが少し覗いていた。この人はコーヒーを飲む仕草さえも優雅で気品があり、彼がそこに座っているだけで、その存在感が際立ち、カフェ全体が輝きを増すとさえ言えた。
ちょうどそのとき、藤田深志がこちらを一瞥したが、すぐに女性との会話に注意を戻した。
鈴木之恵は我に返り、時田言美を連れてカウンターでコーヒーを注文した。
全部で40杯以上、小さな数ではない。カウンターの女の子は店のコーヒー豆が足りないので倉庫から取りに行く必要があると言い、全部できるまで少なくとも1時間かかるとのことだった。
二人は支払いを済ませた後、退屈そうにカウンターで待っていた。
鈴木之恵は思わずまた振り返って見た。藤田深志は携帯電話を見つめ、長い人差し指で素早く画面をタップしていた。
鈴木之恵は携帯が振動するのを感じ、開くと彼からのメッセージだった。
「仕事をしに来させたのに、同僚を買収するためにコーヒーを買いに来るとは、これがあなたの言う一生懸命働くということ?」
鈴木之恵は携帯をカバンにしまい、返信するつもりはなかった。
隣の時田言美はまだ小声で話していた。
「之恵、藤田社長は将来どんな奥さんをもらうと思う?」
そう言って、また独り言のように呟いた。「きっと仙女のように美しい人よね」
コーヒーが全部できあがるまで、ちょうど1時間かかった。この1時間は鈴木之恵にとって地獄のような苦痛だった。
注文量が多かったため、カフェはスタッフを配送の手伝いに付けてくれ、鈴木之恵と時田言美は道案内だけすればよかった。