二人はベッドの両側に立った。
お爺さんは左右を見渡し、
「之恵を藤田グループに入れることにした。彼女はデザインを専攻していたから、まずはデザイン部で経験を積ませよう。深志、お前が手配しなさい」
藤田深志は数秒黙った後、
「お爺様、彼女はデザイン部の仕事の強度に耐えられないでしょう。それに、長年この仕事から離れていて、以前学んだ専門知識はもう忘れてしまっているはずです」
お爺さんは鼻を鳴らし、「忘れたなら思い出せばいい。之恵は賢い子だ。お前という夫が後ろ盾になれば、きっと期待に応えてくれるだろう」
「お爺様、藤田グループは普通の企業ではありません。私の社員に対する態度はご存知でしょう。特別扱いはしませんし、仕事能力の劣る社員は容認できません。藤田グループで働き続けられる人は、皆エリートばかりです」
「馬鹿者!之恵は普通の人間じゃない、お前の妻だぞ!」
藤田深志は叱られて黙り込んだ。
傍らで鈴木之恵は、この祖父と孫の言い争いを黙って聞いていたが、ようやく口を開く機会を見つけた。
「お爺様、深志の言う通りです。私は卒業後デザインの仕事から離れていて、この仕事をこなせる自信がありません。彼に迷惑をかけることになります」
彼女は本当に行きたくなかった。今は新シーズンの発表会が終わったら離婚できることだけを願っていた。
お爺さんは鈴木之恵を慈しむように見つめ、彼女の手を握りしめた。
「心配するな、お爺さんが後ろ盾になってやる。思う存分やってみなさい。お前がジュエリーとデザインが好きなのは知っている。まだ24歳だ、この年齢なら好きなことをすべきだ」
鈴木之恵はお爺さんの慈愛に満ちた眼差しを見て、後ろめたさを感じて黙り込んだ。
どうしよう?お爺さんは誤解しているみたい。本当に彼の側にいたくないのに!
「これで決まりだ。数日後に退院したら、之恵は正式に藤田グループに入社する。後の手配は任せる。お前の妻を苦しめるなよ」
お爺さんは3年前に彼女たちの結婚を決めたように、即座にこの件を決定した。
藤田深志は今回反論しなかったが、鈴木之恵には分かっていた。彼は自分が藤田グループに入ることを歓迎していない、ただ我慢しているだけだと。
お爺さんは病院に約半月入院した後、すっきりと退院した。