第32章 離婚はやめにしないか?

藤田深志は眉間にしわを寄せ、

「前に言ったでしょう。これからは『旦那様』って呼ぶって。また忘れたの?」

「もう離婚するのに、何て呼ぶかなんて重要?」

藤田深志は目を細めて言った。「重要だよ」

鈴木之恵はこれ以上この子供じみた話題で議論したくなかった。

「小柳さんに料理を作ってもらえない?お腹すいたの」

藤田深志はようやく手を離して一歩下がり、二人は一緒にトイレから出てきた。

小柳さんは外で長い間待っていた。食事の時間になり、若い二人の意見を聞く必要があった。

藤田深志の唇には口紅が多く付いていたが、本人は気付いていなかった。

小柳さんは二人の様子を見回し、経験者らしい表情で尋ねた。

「旦那様、奥様、鍋には酸菜魚を煮込んで、お粥も作りました。それと軽めのおかずを二品。他に何か食べたいものはありますか?」