第39章 鈴木之恵様への19輪の白いバラ

藤田深志は電話を切り、腕の中の彼女を横目で見つめ、最後には腰に巻き付いた手を振り払った。

「借りができたな」

彼はベッドから立ち上がり、手際よく服を着始めた。

その四文字の言葉で、鈴木之恵は再び現実に引き戻された。彼女は何を期待していたのだろう?彼が自分のために秋山奈緒を断るなんて、贅沢な望みを抱いていた。

現実は再び彼女に痛烈な一撃を与えた。

秋山奈緒が必要とする時はいつでも、彼は彼女のもとへ駆けつける。たった今のように一触即発の状況でさえも、すぐに引き下がってしまう。

鈴木之恵は自分を憎んだ。いったい何度傷つけられれば諦められるのだろう。

彼女の愛は塵のように低く、彼からの一度の大切にされることさえ得られない。

藤田深志は素早く身支度を整え、出る前に振り返って一瞥した。