第61章 彼女を抱きしめて眠りたい

藤田深志の瞳の色が徐々に深くなった。この件は確かに偶然すぎて、誰が聞いても疑わずにはいられないだろう。

しかし疑われている人物は彼の枕を共にする人で、三年間同じベッドで寝てきた。彼女がどれほどの器かは、誰よりも彼がよく知っている。

藤田深志は彼女が書斎で描いた落書きのような絵を思い出した。大量の紙を無駄にしただけでなく、しばしば彼の書類を混ぜ合わせ、一度は会議で社員の前で恥をかかせた。

ほとんど考えることなく、藤田深志は柏木正に即答した。「彼女ではない」

誰であろうと、彼女ではありえない。

「社長、実は奥様の作品は悪くないんです。彼女は以前…」

その言葉は途中で遮られた。

村上拓哉は泥酔して意識がもうろうとしており、秘書に腕を支えられながらよろめきながら歩いてきた。

柏木正は急いで手を貸しに走った。

最上階には休憩用のスイートルームがあり、藤田深志も一緒に村上拓哉を送り届けた。

階下では、藤田晴香と秋山奈緒が隅で耳打ちをしていた。

「鈴木之恵を見かけた?トイレに行った隙にいなくなっちゃったんだけど」

藤田晴香は胸を叩いて請け合った。「安心して、彼女と兄の縁はここまでよ。兄は自分の弟を誘惑するような女は選ばないわ。いい芝居が見られるはずよ」

秋山奈緒は半信半疑だった。今は藤田深志に冷遇されており、他にすることもないので、藁にもすがる思いでこの姉妹を信じることにした。結局のところ、事を起こしたのは彼女なのだから、何か問題が起きても自分には関係ない。この件で藤田深志が自分を責めることはないだろう。

「どうやって現場を押さえるの?」

藤田晴香は唇を引き締めて笑った。「もう新聞学科の同窓に連絡して、明日の朝に機材を持って来てもらうことになってるわ。ニュースを待つだけよ」

秋山奈緒は彼女がここまで周到に準備していることを見て、さらに安心感を覚えた。

二人は酒を交わしながら、すでに義理の姉妹と呼び合っていた。

「お姉さん、あそこのシルバーグレーのスーツを着た男性、かっこよくない?」

秋山奈緒は視線の先を追って見たが、首を振った。「あなたのお兄さんには遠く及ばないわ」

藤田晴香はしゃっくりをしながら、「あなたの目は少し悪いわね。私から見たら、まるで白馬の王子様よ。光り輝くような」

秋山奈緒は鼻で笑って同意しなかった。