鈴木之恵は全く怖がることもなく、藤田深志がどんな人物か分かっていた。彼は一瞬でそれらのメディア会社を解散させることができる。この連中が彼に向かってこんなに無遠慮に撮影しているのは、まだ社会の厳しさを知らないからだろう。
話している間に部屋の入り口に着いた。藤田深志はドアプレートを見て、昨日村上拓哉を送り届けた部屋だと確認した。昨日村上拓哉を部屋に案内した後、確かにドアを施錠したことを覚えていた。
藤田晴香は鈴木之恵に敵意のある視線を送り、藤田深志に自信なさげに「お兄さん」と呼びかけた。
藤田深志は今彼女に構っている暇はなかった。記者たちがまだ彼の顔を撮影し続けていた。
彼は一番近くにいる記者の胸のプレートを見て、「シンラクメディアですね?今日撮影した写真が一枚でも流出したら、あなたたちの職業人生はここまでですよ」と言った。
彼は口角を上げて笑ったが、その笑みは目に届いていなかった。強大な威圧感に、彼を囲んで撮影していた記者たちは機材を下ろした。
みんなが互いに顔を見合わせ、最後には緑髪の男に視線が集まった。
「剛さん、まだ撮りますか?」
緑髪の男は罵り言葉を吐いて、「撮るな、今すぐ撤退だ」と言った。
この集団の中で彼が一番経験豊富で、藤田晴香を頼りにしていたからこそこんなに無遠慮に振る舞えたのだが、先ほどの藤田深志の眼差しに本当に恐怖を感じていた。
藤田深志は高い体格で前に立ちはだかり、「削除しろ!」と命じた。
冷たい二文字の言葉は、命令口調で発せられた。
一同は言葉を発することができず、再び緑髪の男を見た。削除するかどうかの判断は、彼らには下せなかった。
緑髪の男は黙り込み、非常に惜しそうな表情で、明らかに苦しい心の葛藤をしていた。しばらくして群衆に手を振って、「削除しろ」と言った。
皆はため息をつき、本当に惜しいと思った。
写真を完全に削除した後、藤田深志はようやく彼らを解放した。
記者たちは意気消沈し、ため息をつきながら階下に向かった。階下に着いてからようやく話し始めた。
「剛さん、一晩中待ち伏せした成果を、どうしてそんな簡単に削除してしまうんですか?」