第75章 テーブルを合わせる

鈴木之恵は彼女を一瞥し、

「男を囲っているあなたの件には興味がない。今日ここで会ったからには一言忠告しておくけど、夜に興奮する時は程々にしなさい。階下の人に何度も苦情を言われないように。みんな面子があるんだから」

秋山奈緒は一瞬顔を青ざめさせ、

「どうしてそれを知ってるの?家に監視カメラでも仕掛けたの?」

秋山奈緒の最初の反応は、この女に監視されているということで、抑えきれない不安を感じた。彼女が何を見ても構わないが、もし藤田深志に発覚したら、それこそ自分で自分の首を絞めることになる。

「あなたみたいに暇じゃないわ。ただ壁に耳ありということを忠告しただけ。他人の家を借りて男を連れ込んでいることを団地中に知られないようにしなさい」

秋山奈緒は機転が利き、彼女の言葉から自分の住んでいる部屋に監視カメラが設置されていないことを悟った。そんなことはできないはずだと。そう思うと、すぐに態度を変え、

「仕方ないわ。深志さんが私に夢中で、何度も求めてくるの。あなたにはそんな風にしなかったでしょう?二人で経験したことある?もしかしてまだ処女なの?」

「面白いわね。大人同士でそんな嘘をつくなんて意味があるの?藤田深志は昨日一日中家にいたわ。あなたの部屋に隠していたのは誰なの?彼は知ってるの?

家賃も払えないくせに、男を囲うのに上司の家を使うなんて?」

秋山奈緒は怒りで足を踏み鳴らし、「鈴木之恵、何が得意げなの。私たち十数年の仲よ、彼はいずれ私と結婚するわ」

「そう、待ってなさいよ。子供が生まれたら、戸籍に入れてくれるかしら?」

鈴木之恵は秋山奈緒の平らな腹部を見て、意味深な笑みを浮かべた。何を妊娠したのか、こんなに長い間ウエストラインが変わらないものだ。

秋山奈緒は鈴木之恵が自分の妊娠詐称を見抜いたことを知り、厚かましくも反問した、

「あなたに産めるなら産んでみなさいよ。結婚して三年経っても卵一つ産めないくせに、人のことを笑える立場?」

「産むか産まないかに関係なく、私は藤田夫人よ」

鈴木之恵は軽く笑い、そのまま扉を開けて中に入り、外で歯を剥き出している秋山奈緒を置き去りにした。個室に戻ると、給仕が断続的に料理を運び始めていた。

藤田晋司が入口で彼女を待っていた、

「之恵、深志が隣にいるんだけど、テーブルを合わせない?」