鈴木之恵が目的地に着いたとき、加藤沢はすでにそこで待っていた。彼女が車を停めると、加藤沢が手を振っているのが見えた。
「之恵さん、私たち二人だけで行って大丈夫でしょうか?」
加藤沢は助っ人が必要だと感じていた。二人だけで素手で相手の縄張りに乗り込むのは危険すぎる。修理工場は男ばかりで、二人を片付けるのは簡単すぎるだろう。
「二人連れてきたわ」
鈴木之恵は楓に電話をかけ、二人を呼び寄せた。
加藤沢は体格のいい若い男性二人がついてくるのを見て、急に自信がついた。
「行きましょう!」
四人で修理工場へ向かった。
鈴木之恵は歩きながら自動車修理工場を観察した。規模は小さくなく、大きな敷地を占めていた。
敷地内には修理が必要な車が数台停まっており、数人の整備士が作業をしていて、金属音が響いていた。すぐに彼らの来訪に気付いた人がいて、二十歳にも満たない若者が近づいてきた。
「車の修理ですか?」
彼は周りを見回したが、修理が必要な車が見当たらず困惑した様子だった。
加藤沢は素早く対応し、若者の言葉に乗った。
「ブレーキが故障してるんです。修理をお願いできますか」
若者は門を全開にした。「車を中に入れてください。この数台の修理が終わり次第、整備士が見させていただきます」
「細谷幸夫さんにお願いできませんか?以前からずっと彼に修理してもらっていて、彼しか信用できないんです」
加藤沢は嘘をついた。細谷幸夫は以前鈴木之恵の母親の車を修理した整備士だった。
若者は一瞬戸惑った様子を見せた。「叔父さんを知ってるんですか?」
「はい、私は常連客なんです。この古い車はどこで修理しても安心できなくて。また故障してしまったので、細谷さんにお願いしたいんです」
若者は鼻で笑い、振り向いて仕事に戻ろうとした。もう相手にする気がない様子で、
「嘘をついてますね。叔父さんはもう何年も車の修理はしていません。あなたたち一体何者で、叔父さんに何の用があるんですか?」
加藤沢は咳払いをして、「私たちは確かに細谷幸夫さんの知り合いです。ちょっとお願いがあって来ました。可能であれば、一声かけていただけませんか」