柏木正は一瞬気まずい思いをし、すぐに反応して携帯を奪い取り、電話を切った。
「あの...藤田社長、これからどうしましょうか?」
契約も終わったし、柏木正は家に帰れるだろうと考えていた。彼の可愛い妻は一日に八回も電話で催促してくるのだから。
藤田深志はこの時、長年彼について来た秘書を見つめ、とても嫌そうな目つきをした。
「そんな甘ったるい備考を書く必要があるのか?」
柏木正は恥ずかしくて死にそうだった。彼の妻を溺愛する性格が、予期せずに上司の前で露呈してしまった。しかも上司はストレートな男だ。
「社長、嫁さんを見つけるのは簡単じゃないですよ。今時、女性は希少動物ですから。たまたま好きな人と結婚できたなら大切にしないと、自滅するようなものです。」
話している間に、手の中の電話が再び鳴り出した。