第90章 私には好きな人がいる

「誰がお風呂で服を着るの?」

鈴木之恵は隣に座っている叔父を振り返って見て、地面に消えてしまいたいほど恥ずかしかった。彼女は携帯を持って二階に上がり、藤田深志が皆を困らせるような下品な言葉を言い出すのを恐れていた。

「私は実家にいるの」

彼女は特に言及し、変なことを言わないように暗示した。

向こう側で、藤田深志はタオルで髪を拭いながら、

「何を緊張してるんだ。ただ家で使ってるシャンプーのブランドを聞いて柏木正に買ってきてもらおうと思っただけだよ。ホテルのは臭いが気に入らなくて」

話している間に、鈴木之恵は二階の部屋に戻り、ドアを閉めてようやく安堵のため息をついた。

「家で使ってるのはアメリカのブランドよ。私が一本送るわ。買おうとしても通関に半月かかるから、そんなに早く届かないと思うの」

「そうか、じゃあ送ってくれ」

二人が話している最中、鈴木之恵の画面が突然真っ暗になり、右上の自分の姿しか見えなくなった。

「藤田深志?」

彼女は彼の携帯に何か問題が起きたのかと思い、今相手が声を聞けるのかどうかも分からず、まだ配送先の住所も聞いていなかった。

「藤田深志?どうして見えないの?」

彼女がもう一度尋ねた。

画面が突然明るくなり、彼女は目が眩むほどの白い腹筋を大きく映し出されて、その腹筋からさらに下を見ると、喉が乾いて唾を飲み込み、すぐに携帯をベッドに投げ返した。

「藤田深志、あ、あなた何してるの?」

普段はあんなに冷たい人が、ドアを閉めたとたんこんな大胆な行動に出るなんて思いもよらなかった。全裸でビデオ通話するなんて、恥ずかしくないの?

向こう側で低く笑い声が聞こえ、

「服を探してたんだ。君が見たいって言ったじゃないか?」

鈴木之恵は慌てて、「誰があなたなんか見たいって!」

「さっき誰が『どうして見えないの』って聞いたんだ?」

鈴木之恵はこめかみがズキズキして、確かに自分がそう聞いたような気がした。

「だって全裸だって知らなかったじゃない!」

この時、藤田深志はすでにパジャマに着替えていて、

「携帯を拾って」

と言った。

鈴木之恵は今や携帯の方を見る勇気もなく、「嫌!」

「もう着替えたから、今携帯を拾って」