第101章 白い生足

陸田直木の悲しそうな表情を見て、藤田深志は拳を振り上げるのを止めた。

数言葉を交わしている間に、藤田晴香が早足で追いかけてきて、実の兄が険しい顔をしているのを見た。彼女は三人の間で視線を巡らせ、直前に三人が何を話していたのか分からなかったが、なんとなく雰囲気が良くないと感じた。

「お兄ちゃん、来たの?」

藤田晴香は藤田深志にだけ挨拶をした。いわゆる義姉なんて相手にしたくなかった。

藤田深志は「うん」と答え、尊大な口調で注意した。

「お義姉さんもいるのに気付かないのか?挨拶しないの?」

藤田晴香は焦って本音を漏らしそうになった。「私なんて……」

しばらく間を置いて、不本意ながら口から二文字を絞り出した。「お義姉さん」

藤田深志の強張った表情がようやく少し緩んだ。

藤田晴香は挨拶を済ませると、目を陸田直木に釘付けにした。

「直木さん、あなただと分かっていたら、もっと早く陸田メディアに会いに行ったのに」

陸田直木は失恋の感情から抜け出せず、すぐには反応できなかった。

「え?何のために?」

「もう」

藤田晴香は可愛らしく不満を漏らし、心の中で思った。チャリティーパーティーの夜、あなたの凛々しさに惹かれたのに、まさかこんな縁があるなんて。早く知っていれば、あなたからの求婚を待っていられたのに。

彼女は色々と調べたが、彼がどこの会社にいるのか分からなかった。あいにく、その夜の来賓リストは柏木正に回収されてしまい、どれだけ懇願しても手に入れることができなかった。

陸田直木の視線は思わず鈴木之恵に向かい、見れば見るほど胸が痛んだ。

四人はその場に立ったまま数秒間、それぞれの思いを抱えていた。

「直木さん、ゴルフをしませんか?管理人に連絡して、コースを空けてもらいますよ」

陸田直木は気が乗らなかったが、藤田深志の前では断るわけにもいかなかった。藤田晴香は陸田直木を説得できないと見るや、藤田深志に目標を変えた。

「お兄ちゃん、一緒に行きましょう」

藤田晴香は藤田深志の服を引っ張りながら、目配せして助けを求めた。

藤田深志は今日本来仕事の予定があり、数日間休んでいたため仕事が溜まっていた。朝食後に会社に行って残業するつもりだった。まさかこんなことになるとは思わなかった。