藤田深志は彼女に押されて、意識が少し戻ってきた。
「明日、私と一緒に帰ろう」
彼はもう一度強調した。
鈴木之恵は今、撫でられた猫のように、とても素直だった。
「はい」
彼女の声は細くて柔らかかった。
次の瞬間、藤田深志は再び彼女にキスをした。
「深志、深志...」
藤田深志は彼女の唇を噛んで、記憶力の悪さを罰した。何度も「ダーリン」と呼ぶように強調したのに、彼女はまだ覚えていなかった。
「之恵、ダーリンって呼んで!」
「あなた、やめて。コンドームがないわ」
鈴木之恵は絶好の理由を思いついた。この別荘の近くにはコンビニが少なく、買いに行くのも不便だった。
藤田深志は案の定、次の瞬間に自分が先ほど寝ていた場所に仰向けになり、大きく息を荒げた。
鈴木之恵は目的を達成したものの、心の中で抑えきれない喪失感が湧き上がってきた。彼はまだ赤ちゃんを望んでいない、一触即発の状況でもコンドームがないという理由で途中で止めてしまう、たとえ我慢が辛くても。