社員用エレベーターが開くと、外で待っていた人々が次々と入り込み、数秒でエレベーターは満員になった。
秋山奈緒は満員のエレベーターを見て、不満げな表情を浮かべた。
彼女は藤田グループで横暴な振る舞いをしてきたため、会社の誰もが彼女に一目置いていた。この空気の読めない連中は挨拶もしないだけでなく、彼女が外に取り残されているのを見ても先に入れようともしなかった。
エレベーター前で10分近く待ってようやく乗り込んだ彼女は、愛情込めたお弁当を手に持ち、まずデザイン部へ向かった。山田結城がコーヒーを持って入ってきて、彼女の肩をかすめながら自分の席へ向かった。デザイン部では二人が最も親しい間柄だったため、秋山奈緒は山田結城が今日挨拶もしないことを不思議に思った。
「山田結城、私にもコーヒーを入れて。砂糖少なめで氷なしで。」