藤田深志は祖父に酷く叱られ、祖父は皆の前で今村執事に玉竜湾のマンションを売りに出すよう直接指示した。縁起の悪いものは置いておけないと。
藤田晋司の方はすでにスムーズに友人からマンションの間取り図を入手していた。
祖父は藤田晋司が渡してきた図面を見て、やっと眉間の皺が緩んだ。
藤田深志の眉から血が出ていたが、今回祖父が一日正座させなかったのは軽い方だった。
鈴木之恵は祖父の怒りが少し収まったのを見て、藤田深志を部屋に連れて行き、救急箱を持ってきて手当てをした。
ピンセットで綿球を傷口に当てると、藤田深志は思わず「痛っ」と声を上げ、やっと痛みを実感した。
「お前は初めて祖父に会ったわけじゃないのに、なぜこんな時に水を差し出すんだ。果物ナイフでも渡せば、今頃未亡人になっていたところだ」