第132章 周知の事実、秋山奈緒は略奪者

秋山奈緒は手にドレスを持って困惑した様子で尋ねた。

「私、この格好でいいかしら?」

何日も落ち込んで、朝からずっと泣いていたため、秋山奈緒は今、まぶたがひどく腫れているように感じた。

藤田晴香は彼女を寝室に押し込んで、ついでにドアを閉めながら言った。

「自分を信じて、あなたが一番綺麗よ。兄さんはあなたの顔が好きなの。そうじゃなければ、鈴木之恵なんて代用品を受け入れるはずがないわ。」

秋山奈緒は言われて元気が出てきた。寝室に戻ると、まず顔を洗い、シャワーの水が流れる音を聞いているうちに、突然吐き気が込み上げてきた。トイレに駆け込んで、朝飲んだヨーグルトを全部吐き出してしまった。胃の中はまだひどく気持ち悪く、どうしたのかわからなかった。

彼女は壁にもたれてしばらく休んでから、藤田晴香が持ってきたドレスに着替えた。それは彼女の好みのスタイルだった。

藤田晴香は外で長く待ちすぎて我慢できなくなり、直接ドアを開けて入ってきた。着替え終わった秋山奈緒を見て目を輝かせた。

「奈緒、このドレスがあなたに似合うって言ったでしょう。叔父さんの店に掛かっていたのを見た瞬間、これはあなたのために作られたものだと思ったわ。」

秋山奈緒はくるりと回って尋ねた。

「似合う?」

藤田晴香は親指を立てて、「似合うわ!」

秋山奈緒の気分が良くなり、化粧台に座ってメイクを始めた。

藤田晴香は笑って言った。「これこそ私の知っている奈緒よ。私が来た時のあなたがどんな風に見えたか知ってる?」

秋山奈緒が答える前に、藤田晴香は続けた。

「負けた闘鶏みたいだったわ。私の親友が誰かにいじめられるなんて許せない。どんな時でも、私はあなたの味方よ。」

秋山奈緒がメイクを終えると、すっかり元気を取り戻していた。

「晴香、私は必ず藤田深志を取り戻すわ。あの女を兄さんの側から追い出してみせる。」

一方、藤田深志は車の中で書類を見ながら何度かくしゃみをした。

彼が依頼したデザイナーから新しい既製服が届き、鈴木之恵が試着した後、それを藤田深志の車に置いた。今回、藤田深志は服をしっかりと隠し、二度と事故が起きないようにした。

柏木正から仕事の報告の電話がかかってきた。藤田深志は書類を見ながらスピーカーフォンにして、