鈴木之恵は吐き気が収まると、疲れた表情を見せたが、心は熱く燃えていた。今や彼女も切り札を手に入れたのだから。
遠くで、藤田深志は鈴木之恵を連れて客人たちに挨拶を済ませていた時、今回の藤田グループの祝賀パーティーに謎の大物が出席していることに気付いた。
鈴木由典は東京都で有名な不動産王で、彼の不動産業よりも有名なのは彼の容赦ない商法だった。緑森不動産が彼の手に渡った時はまだ中堅企業だったが、彼の経営のもと、わずか5年で一大勢力となった。
土地開発において、東京都ではもはや緑森不動産と競える企業はなく、利根川以南の地域でも至る所で緑森不動産の姿が見られ、独占状態を形成していた。
富豪界では、南の鈴木由典、北の藤田深志、この二人の神様は軽々しく刺激してはいけない人物だと言われていた。