第139章 謎の来客

鈴木之恵は吐き気が収まると、疲れた表情を見せたが、心は熱く燃えていた。今や彼女も切り札を手に入れたのだから。

遠くで、藤田深志は鈴木之恵を連れて客人たちに挨拶を済ませていた時、今回の藤田グループの祝賀パーティーに謎の大物が出席していることに気付いた。

鈴木由典は東京都で有名な不動産王で、彼の不動産業よりも有名なのは彼の容赦ない商法だった。緑森不動産が彼の手に渡った時はまだ中堅企業だったが、彼の経営のもと、わずか5年で一大勢力となった。

土地開発において、東京都ではもはや緑森不動産と競える企業はなく、利根川以南の地域でも至る所で緑森不動産の姿が見られ、独占状態を形成していた。

富豪界では、南の鈴木由典、北の藤田深志、この二人の神様は軽々しく刺激してはいけない人物だと言われていた。

なぜこの大物が京都府に、そして藤田グループのヨットに現れたのか不思議だった。彼の顔は経済誌によく載っており、他人は知らなくても、富豪界で育った藤田深志は一目で分かった。

藤田深志は自分ではこの大物を招待していなかったが、その意図は分からないものの、来客は客だから粗末に扱うわけにはいかない。

彼は新たにグラスを手に取り、鈴木之恵を連れて近づいた。

「鈴木社長のご来臨、失礼いたしました」

鈴木由典は手のグラスを藤田深志のものと軽く合わせ、深い眼差しで、藤田深志を見る時、かすかな怒りを含んでいるようだった。

「藤田グループがこれほどの盛大な発表会を開き、さらに祝賀会まで。たまたま京都府にいたので、この賑わいに加わらないのは惜しいと思いまして」

藤田深志は眉を少し上げ、すぐに普段の冷淡な表情に戻った。

「鈴木社長、事前にご連絡いただければ、最高級のスイートルームをご用意させていただいたのに」

鈴木由典は遠慮なく返した。

「それは有難い。では今からでも手配していただけますか?」

藤田深志は既に言葉を出してしまったので、一室のスイートルームを惜しむことはなかった。このヨットは藤田グループの財産で、全国でこれより大きいものは見つからず、部屋はいくらでもあった。

彼は柏木正を呼んで手配させた。

鈴木由典の視線が彼の隣の鈴木之恵に向けられ、眼差しがかなり柔らかくなった。