第137章 イチャイチャ:社長と奥様の3分間キス

野次馬たちが一斉にはやし立て始め、群衆の中から誰かが「キスして!」と叫び声を上げた。

その後、場面は制御不能になり、全員が声を張り上げて「キスして、キスして!」と叫んでいた。

鈴木之恵は恥ずかしがり屋で、このはやし立てを聞いただけで顔が赤くなった。藤田深志を見る勇気もなく、彼が本当にキスしてくるのが怖かった。こういうことは密室でするのはいいけど、ステージの上で演し物のように人に見られるのは良くないと思った。

数秒間、時が止まったかのように感じ、鈴木之恵は地面に消えてしまいたかった。

藤田深志は彼女を横目で数秒見つめ、彼女の困った様子を見て笑いたくなった。家の中では強気なのに、結局は小さな臆病者だ。

彼は優しく彼女の顎を持ち上げた。鈴木之恵は突然目を上げて彼を見つめ、驚いた子鹿のようだった。

「やめ...」

言葉が終わる前に、藤田深志は彼女にキスをした。優しく柔らかく、ほんの軽いキス。

観衆は一斉にスマートフォンを取り出して写真を撮ろうとしたが、多くの人がカメラを開く前に、ステージ上のキスは既に終わっていた。

え?約束の3分間は?

鈴木之恵の顔は茄子のように紫色になり、視線をどこに向けていいかわからなくなった。

対照的に、藤田深志は何事もなかったかのように、落ち着いてマイクを司会者から受け取り、

「これくらいにしておこう。社長夫人は恥ずかしがり屋だから」

観衆は失望のため息をついたが、社長がそう言うなら、誰も要求を出す勇気はなかった。誰が藤田深志をからかえるだろうか?藤田グループでの仕事を続けたくないのだろうか。

鈴木之恵の顔はさらに赤くなり、首筋まで熱くなっていた。部屋にいればよかったと後悔した。出てこなければこんな恥ずかしい経験もなく、人前で恥ずかしがり屋だと言われることもなかったのに。

場の空気は数秒間気まずくなったが、それは鈴木之恵一人の気まずさだった。

司会者がマイクを持ち上げ、

「第一関門は何とかクリアしましたね。次は第三関門です。奥様は藤田社長に何か一つ要求を出すことができます。藤田社長は無条件でそれを受け入れなければなりません。私たち全員が証人です。藤田社長、ごまかしは禁止ですよ」