鈴木之恵は秋山奈緒が差し出した水を見て、心の中で誰を馬鹿にしているのかと思った。
「私を実の姉のように思ってくれるなら、私も嫌がったりしないわ。あなたの手にある水の方が美味しそうだから、交換しない?」
その言葉に、秋山奈緒は一瞬固まり、すぐに反応した。
「お姉さん、この二つの水は同じレモン水よ。私のはさっき飲んだばかりで、交換したくないわけじゃないんだけど、最近ちょっと風邪気味で、うつしたくないの」
鈴木之恵は数秒間、秋山奈緒を見つめ、その視線に背筋が凍るような感覚を覚えた。
「風邪を引いているなら、あなたが触れたグラスは使えないわ。この二つとも飲んでちょうだい。風邪の時は温かい水を多く飲んで、ビタミンCを補給すれば早く治るわよ」
秋山奈緒は目の前の女性が以前とは別人のように変わり、昔のように簡単には騙せないことを悟った。明らかに警戒心を持っていて、もう簡単には騙されない。